現場日記:M様邸【完結】
こんにちは。
設計の菅野です。
今回は築47年の築古物件。
立地はいいけど、スラブ下配管、コンクリートブロック壁、低い梁など
「よくある」築古ならではの特徴を持った物件。
角部屋の特性を生かし、物件のマイナスポイントを感じさせない気持ちいい
空間を作るべく、今回のプロジェクトがスタートしました。
【物件データ】
■所在地 :仙台市若林区
■種別 :マンション
■専有面積:69.35㎡
■建築年:1974年
今回は要所要所に曲線を取り入れたデザイン。
コーナーの壁がちょいとR(アール)だったり
綺麗な色目の仕上げ材が揃いました!
塗装仕上げのドアだったり、クロスの貼り分けだったり、少し艶感も入れたりと
ちょっと大人可愛いテイストに仕上がりそうで楽しみです。
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【before】
解体前の様子。
角部屋の特性を生かして、窓がある外壁側に部屋が3室設けてある間取り。
お部屋に入った瞬間、この間取りも悪くないなと思ったり。
それぞれのお部屋のドアを開けると風が抜けて気持ちいい。
玄関回り。
築古ならではのFF式給湯器が↓
こういった設備の位置は動かせないので、上手く隠す方法を考える必要が。
玄関からLDKに入る所にある梁が一番低く、改修前は床から177cmしかありませんでした。
当初の予定では水回りを囲うブロック壁を壊さない予定でしたが、入れたい冷蔵庫やベッドの搬入ルートを考慮し、壊すプランに変更。
ブロックと梁でガチガチに位置が決まってしまう浴室。
排水の竪管が浴室内に入り込んでいて、この状態だとユニットバスが設置できません。
今回は洗濯機スペースを脱衣室の外へ出して、竪管の手前に設置する事に。
いろんな絡みも考慮しながら、既存と少し違う形で使いやすく再レイアウトする事になりました。
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2021/8/25~
Ⅰ.解体着工
今回もどんどん壊していきます。
壁を壊すと木下地が現れ、床は遮音性能のない昔の床組みが出てきました。
相変わらず凄いごみの量
ブロック以外を先に全て撤去し、いよいよブロック壁の解体開始。
クラッシャーで挟みながらどんどん壊していきます。
ブロックを大まかに壊した後、ブロックの根元や付着している物を全て取り去って解体終了。
床を組む事前提で仕上げられたこの時代のスラブはガタガタ。
今回は床を先に組まないと墨出し(間取りを決める作業)が厳しそうだね、
と大工さんと今後の作業工程を打ち合わせし、ここから本工事スタートです。
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2021/9/6
Ⅱ.断熱工事
今回は築古マンションなので断熱施工はしっかりと。
ウレタン断熱をいつもの様に吹き付けていきます。
吹き付けてはいけないサッシや床スラブ等を養生し、
吹付スタート。
養生が終わったら、バーッと吹付
吹付が終わったら余分に吹いた所を削ります
完成
見た目に温かそう
柔らかそうに見えますが、直ぐにカチカチに
今回は角部屋という事もあり、界壁以外の3面をしっかり吹き付け。
これで壁の結露もしっかり防げるはず。
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2021/9/7~
Ⅲ.配管工事・床組み工事etc.
断熱工事が終わったら、大工工事と並行して設備の配管を。
大工さんと大体の墨を当たったら、そこに目掛けて配管を転がしていきます。
キッチン廻りの配管
脱衣室・お風呂廻りの配管
今回お風呂の排水はユニットバスの排水の位置と上手く合わなかったので、元洗面化粧台の排水を。
(元々化粧台、洗濯機パン、浴室の排水が最終的に合流して、同じ竪管に流れるルートの為、今回の配管が可能でした)
排水を促す為に今回は空気抜きを付けました。
ちなみに壁の際をはっている木は際根太。
床を下地組する前の準備です。
今回スラブがガタガタなので、接着するのも一苦労。
大工さんがレーザーを当てながら何とか水平を取って高さ調整していきます。
際根太を立てたら、遮音仕様の床束→床下地のボード固定。
今回あっという間に床下地が組まれました。
ここまで来るとやっと墨出し。
墨を打ってから、間仕切りがくる所に穴を開けて補強をしていきます。
穴が開いている所の上に間仕切り壁が。
床が下がらない様に補強をかけていきます。
玄関土間から部屋に上がる所
こういった所も床が下がらない様しっかり補強
ここまでこれば床仕上、壁、天井とどんどん進めていけます。
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2021/9/17~
Ⅳ.壁・天井・床下地~
今回、築古物件ならではの色々な調整・取り合いが難しく、
今日は天井、今日は間仕切り壁、と大工さんも頭を悩ませながら作業をしていきます。
今回天井高がどうしても高く取れないという事情もあり(階高が元々低い為)、
各部屋や梁間ごとにでも天井高が取れるなら上げていこうという話に。
「この梁からサッシまでは予定通りの天高が取れるね」
「こちらはまず間仕切りを立ててから、それぞれの天井高を見てみるか」
ここまで来るとある程度の収まり・寸法が見えてきます
上の写真でちらっと写っているのはユニットバスの浴槽。
ユニットバスの施工も間仕切りの途中で入ります。
今回はユニットバス横の梁との絡みもあり、上手く想定の位置にうまく収まるのか・・・
どきどきしながら見守ります。
1216サイズのユニットバスが無事収まりました!
壁下地と天井下地が進んでくると、電気屋さんが電気配線を通しにきます。
それぞれの寸法がちょっとづつ変わっているで、図面を見ながら現地で再度打ち合わせをしながら進めていきます。
サイズ変わったので現地で寸法の調整を
天井から下がっているのが新規配線。
配線が足りているか、スイッチの所まで行っているのかをチェック
職人さんのメモを見ながら
トイレのダクトも新規配管
電気配線が終わると梁囲いや天井ボード貼と、一気に進めていきます。
天井ボードを貼り終わったら、次はフローリング。
今回はいいタイミングで貼り上りを確認できました!
(貼るとすぐ養生してしまうので・・・)
今回採用したのは胡桃の無垢材。
淡い褐色で優しい木目がとれも綺麗です。
触ってみると見た目の通りやっぱり柔らかい!
裸足で歩くとかなり気持ちよさそうです。
床が仕上がると間仕切り壁下地→ドア枠取付→壁下地を入れ→ボード貼りと、どんどん進んでいきます。
楽しみにしていたR壁の下地も取り付けられました。
(今回一番テンションが上がりました 笑)
大工さんの作業はここから大詰めです。
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2021/10/29~
Ⅴ.内装仕上げ・造作取付
大工さんのボード貼りが終わりました!
だいぶ部屋らしくなってきました。
角部屋なので、ドアがないと本当に明るい!
ここからどんどん仕上げに入っていきます。
いつもの流れだと、クロスや塩ビタイル貼→設備・造作設置なのですが、
キッチンと造作家具の取り合いもあって、先にダイニングカウンターだけ設置します。
今回使用する素材は、床に合わせて胡桃の無垢材。
しっかり厚みがある物で2M以上取るのが難しい材料ですが、何とか入手できました!
奥行きがしっかりあるカウンターなので、コーナーにも座れる様Rを取りました。
赤褐色の色味がいい感じ。
胡桃の天板を使用するのは初めてですが、色味と優しい木目はチェリー・チーク系の床にも合いそう。
今後も色々活用出来そうな樹種です。
天板の下はこんな形で補強。
これで大きな天板が来ても大丈夫!
足プラス収納も付いているので、不思議な形をしています。
キッチン側はお掃除しやすいメラミン材、リビング側は見栄えがする無垢材と
材料を使い分けています。
毎度手間な事を家具屋さんにお願いして頭が上がりません!
今回脚は現場で塗装仕上げです。
造作のカウンターが入ると次にキッチン工事。
キッチンの床だけは先に塩ビを貼っています。
今回のキッチンはWOODONEのsu:ijiシリーズ。
造作家具の様な佇まいと塗装仕上げの扉が今回のイメージぴったりだったので
ご提案させて頂きました。
・・・かわいい!
先に取り付けてもらった家具にぶつけてキッチンを設置してもらいました。
キッチンの完成形は仕上がりの所でのお楽しみという事で・・・
今回はキッチンの設置が終わってからクロスなどの仕上げ。
まずはお馴染みのパテ処理。
・・・が終わると次の作業は↓
何をしているのかと言うと、高さを測って印を付けています。
この後私も墨を打つお手伝い。
通常だとやらない作業なのですが、なぜこの様な作業をしているかと言うと・・・
クロスの上下を貼り分けたかったから。
何度も印を付けながら下を貼って上を貼ってと、本当に手間な作業だったのですが、
何とか何とか綺麗に貼り上りました!
素敵!
クロスや塩ビタイルの仕上げが終わったら、建具を現場に入れて貰って現場塗り。
塗装してから立てかけっ放しだと扉が反ってしまうし、直ぐ取り付けると塗装が貼り付いてしまうしで、絶妙なタイミングを狙って、塗装→建具の吊り込みを行いました。
内装を仕上げてからタイル施工も↓
内装仕上げはほぼ完成。
ここからは通常通り設備の器具付け、つなぎ、照明器具を設置して完成です。
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2021/12/10
Ⅵ.完成
先日無事完成・お引渡しが終わりました!
完成写真と拘りポイントを私が撮った写真で少しだけ・・・
毎度お馴染みのパースと同じカット↓
照明を付けた雰囲気もよいですが、Rの壁が自然光だと優しいクロスの色味と相まって、
優しい雰囲気でとても綺麗です。
クロスの色と合わせて調色してもらった建具や巾木も違和感なく収まり一安心。
うん、イメージ通り!
今回はテレビ取付面にちょこんと付けた丸い照明もですが、
要所要所にRを取り入れさせて頂きました。
お陰で凄く柔らかい空間になりました。
▲無垢材で作った腰壁の笠木。継ぎ目がアクセントになっています
▲リビングからキッチンが見えない様に建てた目隠しパネル
こちらにもちょこんとRが。キッチンパネル合わせて工場でRカット
▲ちょこんと付いた取っ手もR(丸)
▲実はこんな所も・・・(カウンター脚)
今回現場塗りした塗装の扉ですが、実はLDK側と各個室側色が違います。
▲個室側
枠側がどうなっているかと言うと・・・
こんな感じで枠も塗り分けて、閉めた時にはドアと同じ色になる様に仕上げています。
ご案内していたインテリアショップで、モモナチュラルのダイニングチェアとペンダント照明をご購入頂いたのですが、
胡桃材と椅子のアルダー材の色味がぴったり!
お客様が一目ぼれされた照明器具もまん丸で空間に馴染み、よい感じです↓
今回は水回りの位置にかなり制約があった為、大幅に間取りは変えてないのですが、
内装仕上げと使い勝手を意識しながらのプランでした。
色々と取り合いが難しく、私含め職人さん達も試行錯誤の日々でしたが、
どの現場も意識していますが、今回は特にM様も含め本当にみんなで作り上げた現場でした。
M様、職人さん達本当にありがとうございました!