リノベーションとは!?どんな人がリノベーションを検討するべき?
はじめまして、リノベ不動産仙台の鈴木です。
これまで設計事務所で、新築住宅の内装をお客様に提案するコーディネート業務に従事しておりましたが、既存住宅(中古住宅)の活用に興味を持ったことをきっかけに、今年からリノベ不動産で働きはじめました。
リノベ初心者として、リノベーションや資金計画など幅広く毎日勉強中です。
学んだ内容を整理するという意味で、題して「リノベーションマスターへの道」というテーマでコラムを執筆していくことにしました!
このコラムでは、「リノベーションとは?」「スケルトンって?」 というリノベ初心者の方向けに、リノベーションに関わることを紹介していければと考えています。
一般的な知識や私が個人的に思うことをまとめ、リノベーションの良さや面白さ、また気をつけるべきポイントなどをお伝えしていきながら、みなさんと一緒にリノベーションについて学んでいきたいと思います。
何かの縁で当コラムまで辿り着いた方のお役に立てれば幸いです。
第1回目の今回は、「リノベーションとは!?どんな人がリノベーションを検討するべき?」というテーマです。
1.リノベーションとは?
雑誌やWebでも特集が組まれることが多くなった「リノベーション」。住宅購入の選択肢の1つとして一般的になりつつあるリノベーションですが、実際にはどんなものなの?と思われる方は多いのではないでしょうか。
本記事では、住宅購入を検討されている方、中古物件のリノベーションに興味がある方向けに「そもそもリノベーションとは?」というところから解説していきます。
1-1.「リノベーションとは?」を解説!
リノベーションとは、もともとある物件を自分たちにあった住環境へと改良、変更することを指します。
英語の「renovation」には「改装、刷新」という意味があり、プラスαの新たな機能や価値を向上させることを意味します。そのため、既存住宅を新築の状態に近づけ、さらに新しい価値を付加することが「リノベーション」と言えるでしょう。
リノベーション工事は、部屋の扉や床、壁、天井などを全て取払い、コンクリートの構造体のみの状態(=スケルトンと呼ばれる状態)から行うこともでき、ある程度制限はあるものの思い通りの間取りに変更できるのが特徴です。「マンションでも広いLDKがほしい!」「ちょっとした書斎スペースがあればな…」「趣味の映画鑑賞を思い切り楽しめるシアタールームが夢!」など、頭の中で思い描いていた間取りや空間を実現することができます。
また、スケルトンに戻すことにより、キッチンやお風呂などの給水管や排水管といった水が通る管を交換することができるため、新しい空間に生まれ変わるだけでなく、見えないところも取り替えることができるという安心感があります。
このように住まい手の思いも反映させて、元ある建物の良さを活かしつつ性能向上など、付加価値を与えるのがリノベーションと言えます。
before写真
スケルトン写真
after写真
1-2.リノベーションとリフォームの違いは?
一方でリフォームは、住宅の汚れや破損、老朽化した部分を表面的にもう一度元の状態(新築時の状態)に戻すというニュアンスで使用されることが多く、新築に近い状態に復元することがリフォームと言えます。
例えば、
・古くなったキッチンを新しく取り替える。
・傷や汚れのついた壁紙を貼り替える。
といった、部分的な修繕がリフォームであり、リノベーションに比べ工事の規模が小さいのが特徴です。
リノベーションの目的が大規模に「刷新すること」に対して、リフォームの目的は部分的に「修理すること」という意味合いが強く、この工事の目的と規模の違いがリノベーションとリフォームの違いと言えます。
リフォームは住宅(ハードウエア)を新しく整えることによって価値を復元するものに対し、リノベーションは、ライフスタイル(=ソフトウエア)から考え直し、理想の住まいを築き上げる行為であると考えます。
1-3.リノベーションとコンバージョンの違いは?
「リノベーション」の引き合いに出されるものとして「コンバージョン」があります。聞き馴染みのない言葉ではありますが、実は身近なところにもたくさんの事例が存在します。
「倉庫をつくりかえてカフェとしてオープン」「オフィスビルをホテルとして再利用」のように建物の再利用が注目を浴びることがありますが、こういった建物の用途を変更して再生させることをコンバージョンと呼びます。もとの建物の古さを活かした味のある空間が特徴です。
1-4.中古物件の有効活用
ここまでリノベーションとリフォーム、コンバージョンについてまとめてきましたが、全て古い物件を有効活用するという点で共通しています。特にリノベーションやリフォームは、積極的に中古物件という資源を有効活用することで、古くなったら壊してまた建てればいいというスクラップアンドビルドの考え方に疑問を投げかける、良いきっかけを与えてくれています。
○リノベーション……既存住宅を新築の状態に近づけ、さらに新しい価値を付加すること
○リフォーム ……既存住宅を新築に近い状態に復元すること
○コンバージョン……建物の用途を変更して再生させること
2.今注目のリノベーション
現代の環境問題や社会問題の解決方法の1つして注目され、また大きな広がりを見せているリノベーション。そんなリノベーションの歴史は、日本では30~40年と浅く、これからもっともっと発展が見込まれる分野だと言えるでしょう。
ここではリノベーションの歴史に触れ、住宅市場におけるリフォーム・リノベーションの変遷を見ていきましょう。
2-1.リノベーションの歴史
日本では、1970年代中頃から、一部の大工さんや工務店がリフォームを始め、徐々にリフォーム専門の会社が増えはじめました。1980年代には国としてもリフォームに関する資格制度の開始や減税制度など、リフォームを推進するような政策が打ち出されていきます。
そんな中1990年代に入りバブルが崩壊。土地の価格が下落したことから、高度経済成長期から続いてきた郊外へ庭付き一戸建てを構える新築至上主義も揺らぎ、都心部のマンション需要が拡大しはじめました。
このような背景から中古マンションも増え、リフォーム業界も拡大、そこから核家族化やニーズの多様化によって、リノベーションという新しい概念へと派生したと考えられます。
2-2.新築至上主義から既存ストックへ
リノベーションが広まってきた背景には、消費者の考え方や取り巻く環境の変化が大きく関係しているようです。
例えば国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」によると、生産年齢人口の減少と高齢人口の増加により、2030年には日本の人口がおよそ700万人減少することが予測されています。
また、経済産業省「住宅・リノベーションに関連する現状及び社会環境変化の分析」によると、「住宅一次取得者層の大部分を占める30歳代男性の平均年収、金融資産がともに大きく減少」しており、この世代の新築の住宅取得が難しくなってきているとのこと。最新の「民間給与実態統計調査」(国税庁)の調査を見てみても、20年前と比べると30代前半はおよそ40万円、30代後半はおよそ70万円の開きがあることがわかります。
このような人口と所得の減少により住宅購入者は減少することが見込まれ、さらには高価格になりがちな新築戸建てや新築マンションを選択する人が少なくなることが容易に想像できます。
そのような状況下において、従来の消費者のニーズが「とにかく安くて経済的なもの」であったのに対し、近年は「多少値段が高くても品質が良いもの」「予算面や築年数よりもスペック重視」に変化したことで、画一的な間取りであることが多い新築マンションや建売住宅に対する興味が薄れ、新築にこだわる層の減少傾向につながったと考えられます。
その結果、住宅取得の選択肢として中古住宅(+リノベーション)への関心が高まってきたようです。
とはいうものの、まだまだ日本における新築至上主義は根強く、米国・英国に比べると中古住宅流通の割合は半分以下というデータもあります。リノベーションの分野において日本はまだまだ後進国であり、既存ストックを活用するという考えが希薄です。このような状況を国も問題視し打破すべく、リフォーム・リノベーションを推奨するさまざまな政策を打っているというのが現状なのです。
まだまだ活用できる住宅のストックがあるにもかかわらず新たに建物を増やすことについて、改めて立ち止まって考える必要があると思います。今ある資源を有効に活用して環境問題について考えること。規模の大きな話になってしまいますが、国民一人ひとりが現状を問題視し、解決策の1つとしてリノベーションの認識が広まったらいいな…と、個人的には思うのです。
3.リノベーションのメリットとデメリット
さて、これまでリノベーションの概要に触れてきましたが、これからリノベーションを検討されている方が一番気になるのは、メリットとデメリットではないでしょうか。
ここでは簡単にリノベーションのメリット・デメリットに触れていきます。
3-1.リノベーションのメリットは?
○駅近などの好立地物件での暮らしが可能に!?
マンションは良い立地から建設されていくため、築30年以上の中古物件は駅近にも多い傾向があります。新築マンションでは購入が難しい駅近のエリアでも、中古物件であればよりリーズナブルに手に入れることができます。
○物件そのものが安く、トータルの住宅購入費を抑えられる
新築から5年が経過すると、物件価格が25%下がるというデータがあります。築年数が古ければさらに価格も下がるため、中古物件の購入費用とリノベーションの工事費用を合わせても、新築マンションよりリーズナブルな金額でお住まいを手に入れることができます。
○自由設計で自分好みの空間で暮らせる
マンションの場合間取りをある程度自由に変えることができます。憧れの書斎スペース、使い勝手の良い収納など、希望が実現できることは大きなメリットと言えるでしょう。
3-2.リノベーションのデメリットは?
もちろん、リノベーションにもデメリットはあります。その多くはお住まい探しをお願いする会社へ相談することで解決できることも多いため、不安な点を伝えて早め早めに相談することをおすすめします。
○新築と比較すると耐震性では劣る?
中古物件に対して、外観の印象などからどうしても耐震性に不安を抱かれる方も多いのが現状です。実際コンクリートの耐久年数は100年を超えると言われていますが、建物そのものの構造や外的な要因によって、劣化が早まることがあるようです。
例えばコンクリートの材料や、鉄筋に対してどれくらいの厚さでコンクリートが覆われているかによって、劣化の速度が変わってきます。また外的な要因としては、マンションの空室化により住民から資金を募ることができずに十分な修繕ができない、といった状況も関わってきます。
建物の診断を行うホームインスペクションという制度もありますので、気になる場合は不動産会社などに問い合わせてみるのが良いでしょう。
○リノベーションならではの制約とトラブルに振り回される?
間取りを変えられるとはいえ、構造上再現不可能な間取りがあります。ゼロから創り上げる新築戸建と比較すると、自由度という点で劣ると言わざるを得ません。
管理規約によってフローリング材の遮音性能が決められていたり、フローリング以外の床材の使用が禁止されていたりするケースがあるなど、何でも実現可能というわけではありません。
いざ工事を開始して建物の中を見てみると、もともとの図面と違う形で施工されていた、断熱材が入っていないなど、スケルトンの状態にして初めて見えてくる部分もあります。場合によっては計画していたプランを実現できないこともあるため、希望の間取りがある場合には、設計をお願いしたい会社と一緒に物件選びからプランの実現可否を確認しながら進めていくことが重要であり、未然に問題を防ぐために物件探しと設計をセットで進めていくことをおすすめします。
「制約」を逆に楽しんで、家づくりを一つの思い出づくりと捉えて取り組める方にとっては問題にならないかもしれません。やむを得ない工事内容の変更も楽しめる余裕が必要かもしれません…。
○工事中の近隣に迷惑をかけてしまう
工事をするにあたっては避けて通れない問題です。できる限りの配慮をしたとしても、どうしても平日の日中は音や振動が出てしまいます。工事をお願いしている会社が他の住民に対して配慮をしてくれているか、あらかじめ確認しておくと安心でしょう。
3-3.新築マンションと中古マンション×リノベーションの比較
お住まい探しの中で、新築も選択肢の中にある方もいらっしゃることと思います。「リノベーションについてはわかったけど新築と比べるとどうなの?」という疑問に対して、双方のポイントをまとめてみました。
○新築マンション
・間取りが画一的
・耐震性が高い
・ペット可の物件が多い
・最新の設備が備え付けられていることが多い (ディスポーザーetc…)
○中古リノベ(マンション)
・自由設計
・新築と比較して、耐震性が低い場合がある
・利便性の高い立地を狙いやすい
・低価格
飼うことのできる種類に制限はあるものの、マンションでもペットを飼いたいという方であれば、新築マンションの方がおすすめできます。もちろん中古マンションでもペット飼育可の物件はありますが、広さや立地などをご希望の条件で絞った場合、ペットを飼育できる物件は希少なため、希望に見合った物件を見つけることがより困難になるからです。そのため、条件の見合う中古物件で「ペット飼育可」の物件があれば狙い目と言えます。
また、決まった間取りに対しても、家具やちょっとしたDIYで自分好みの空間をつくることのできる方、最新の免震構造・ディスポーザーなどの住宅設備の備わったマンションに住みたい方も、新築マンションがおすすめです。
それぞれメリット・デメリットがあるため、まずは予算や優先順位を決めて、何が自分たちにとってベストな選択なのかを検討してみることが大切です。話をしていく中で考えがまとまってくることも多いと思いますので、ご家族や不動産会社など、ぜひ話をすることから始めてみてください。
3-4.こんな方にはリノベーションがおすすめ!
○お住まい探しにおいて物件の立地にこだわりのある方
例えば、新築マンションの購入を検討していたとしても、自分たちが希望する場所に物件がなければ、希望する場所に住むことはできません。仮に希望のエリアに物件があったとしても、その物件の間取りや設備に不満があり、妥協しながらの住宅購入になりがちです。
しかし、リノベーションを前提にお住まいづくりを検討すれば、中古マンションもお住まいの候補の一つとなり、新築に比べ、数多くの選択肢から選ぶことができるようになります。特に利便性の高いところや、古くからの住宅街などでは新築物件を探すのは難しいです。 しかし、中古物件をリノベーションする、もしくはリノベーションされた物件も検討の範囲にいれることで、妥協する可能性がぐっと減ります。駅のすぐ近くだったり、子供を通わせたい小学校の近くだったりと、自分たちが暮らしていきたいと考えているエリアでの物件を見つけ出すことができるかもしれません。
もちろん、リノベーションの場合は間取りや設備を自分たちの好みに合わせて変更できるため、立地優先で物件を選んでも、間取りや設備面で予算が許す限り妥協することはございません。これらの理由からお住まいの立地にこだわりたいという方は、リノベーションも選択肢とするべきです。
○できるだけ費用を抑えたい方
新築に比べ物件自体もリーズナブルに購入できるため、リノベーション工事の費用を含めたとしても新築物件より費用を抑えることができます。例えば70㎡1500万円の中古マンションを購入した場合、リノベーション費用に1000万円をかけるとすると合計2500万円。諸経費は物件価格のおよそ10%としても、全体でかかってくる費用は3000万円以下となります。地域を絞った話にはなりますが、私の住む仙台市青葉区のデータをみてみると新築マンションの平均価格は5000万円台、およそ2000万円の差が発生することがわかります。
さらに物件とリノベーション工事費は合算して住宅ローンとして組むことができるため、リフォームローンよりも低金利でローンを組むことができます。これを月々の返済額に落とし込んで考えてみると、金利が1%の35年ローンを組んだ場合支払額はおよそ75000円/月+管理費・修繕積立金となります。
あくまでも一例としてご紹介しましたが、もちろん物件の選び方や工事内容によって、自分に合った返済計画を立てることが可能です。私は住まいを購入することがゴールではなく、理想をかなえた空間で過ごすその先の暮らしの豊かさが重要であると思います。そのためには、無理のない返済が大事な要素であり、それが実現できて初めて「豊かな暮らし」を叶えることができると考えています。
○自分の「好き」に囲まれた空間で生活したい
管理規約や物件の構造により制限があるとはいえ、ある程度自由に間取りを計画できることから希望される方も多いリノベーション。雑誌で目にしたおしゃれなタイルや壁の装飾、造りつけの家具、すでにお持ちの家具に合わせてつくられた使い勝手の良い空間など、楽に生活ができる自分好みの空間で過ごす時間は、心に余裕を与えてくれます。
住宅=「住まい」は買って終わりではなく、あくまでもその先の「暮らし」を豊かにするもの。
満足のいく空間づくりだけでなくその先の豊かな暮らしを実現したい方は、ぜひ信頼できる会社に相談してみることをおすすめします。
これまでお話ししてきたリノベーションのメリット・デメリットを理解した上で、これらの条件に一つでも当てはまる方は、お住まい選びの選択肢としてリノベーションを検討することをおすすめします。
4.今回学んだこと
リノベーションとは一体何なのか、少しでも理解を深めていただけたでしょうか?
・リノベーションとは「元の状態以上の価値を付加するもの」
・「新築」と「中古×リノベ」、それぞれに良さがある
・リーズナブルに便利で快適な住まいを実現したい方にはリノベーションがおすすめ
この3つを頭に入れていただきつつ、これからのお住まい探しにお役立ていただければ幸いです。
次回は「仙台のリノベーション事情」についてお届けします!
○参考HP
▶感動時空研究所
▶オウチーノ
http://www.o-uccino.jp/chuko/sp/column013/
▶ホームプロ
https://www.homepro.jp/renovation/renovation-point/13627-wg
▶LIFULL HOME'S PRESS
https://www.homes.co.jp/cont/press/buy/buy_00258/
○参考資料
▶経済産業省「住宅・リノベーションに関連する現状及び社会環境変化の分析」
▶国土交通省「既存住宅流通を取り巻く状況と活性化に向けた取り組み」
▶桝田 佳寛 2011「建築分野におけるコンクリートの耐久性に関する基準の変遷」
▶「リフォーム業界の需要動向調査」
▶『「中古住宅流通促進・活用に関する研究会」報告書 取りまとめ後の取組紹介』
▶「中古住宅流通、リフォーム市場の現状」
▶「STOCK & RENOVATION 2014」
▶河北新報 平成30年3月31日号
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